サクラ咲ク
九、花韮 [悲別]
「悠希、いるか?」
そう声をかけられたのは、与えられた自室で布団を敷き、寝る準備をしていた時だった。
「はい。永倉さん…ですよね?どうぞ入って下さい。」
そう返事をすると襖が開き、予想通り永倉さんが立っていた。
「どうされたんですか?」
こんな時間に私を訪ねてくるなんて珍しいわ、と思って聞いてみる。
「いや…お前さ、総司とかぱっつぁんとか知らねぇか?」
沖田さんと原田さん?
「知りません…何かあったんですか?」
「いや…ただ見当たらねぇからよ。まぁいいや!こんな時間に悪かったな!おやすみ!」
「いえ、お力になれずすみません。おやすみなさい。」
ヒラヒラと手を振った永倉さんを見送って、そっと襖を閉める。
沖田さんはともかく、原田さんはいつも永倉さんと一緒にいるのに、どうしたのかしら…。
そう思いながら、蝋燭をふっと吹き消す。
月明かりのない夜は、ただ闇にのまれた。
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