サクラ咲ク



――『勿忘草って知ってる?春先に咲く青い小さな花。』






ねぇお梅さん?


貴方の話してくれた勿忘草の色が、目に焼き付いて離れないの。


あの鮮やかな青が。







――『あの花の花言葉はな、“私を忘れないで”や。』







ずっとずっと、誰かの中で生き続けたいと願うのは、人間として当たり前の感情だと思うの。



だって、忘れられてしまうのは、悲しいから。






――『悲しい花やろ?死んでもなお、誰かの中に生きようとする。』






でも貴女は、そんな人間の性を悲しいと言った。

その本当の意味が、私にはまだわからない。







――『もしも私が死ぬ時、悠希が傍におったら…』






だけど、貴女の言った“もしも”があった今、一つだけ分かったの。








――『その時は、私なんかさっさと忘れて、前に進んでな?』







貴女を忘れることなんて、できない……










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