サクラ咲ク
十、黄菖蒲 [手紙]
悠希へ――――――――
貴女がこれを読んでいるということは、私はもうこの世にいないのでしょう。
泣いてへん?
泣いてたりしたら、承知せえへんよ。
ちゃんと前を向きなさい。
その刀に誇りを思いなさい。
貴女は武士なのだから。
初めて会った日のこと、覚えてますか。
私はきっと、一生忘れられへんよ。
あんな事したのに、友達になりたいなんて、ほんまに驚きました。
やけど、ほんまに、嬉しかった。
貴女に会って、人を信じるのも悪くないって思ったんよ。
今日は悠希と初めて買い物に行ったんよ。
これが読まれてるのがいつなんかわからへんけど…
別れなんてきっと突然やから、今のうちに書いとくな。
私がいなくなった時、頼れる人がいないのは大変やと思います。
やから、ここに信頼できる人の名前を書いておきます。
大通りにある一番大きな呉服店にいる立花 菊という人を尋ねて下さい。
私の昔からの友人です。
貴女の全ての事情はもう話してあるので、困った時には頼って下さい。
悠希、
貴女に会えて、ほんまに幸せでした。
貴女の行く道が、光に満ちたものであることを、祈っています。
有難う。
――――――――――梅
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