サクラ咲ク
摩ってくれる手の温かさが、やけにリアルで。
変な話だけど、生きてるって確信を持った。
「大丈夫、です……。ここは何処…?」
ゆっくりと周りを見回すと、青々とした草木が茂っていた。
ちょうど、私のいる場所は大きな木の木陰になっている。
「此処は…京に出る小路だ。ほら、あそこにある小さな道が分かるか?あそこに倒れてたんだ。」
なんせこの暑さだからなぁ、と言ったその人を、ただ見つめる。
京に出る小路?
京って…京都?
私がいたのは埼玉県なのに。
それにこの暑さ。
真夏の暑さ。
死ぬ時は、真冬だったはずなのに。
それからこの人…
袴を履いてる。
そりゃ、私だって剣道着だけど、それでも…
「…それ、竹刀…じゃないですよね?」
腰に差されているそれを指差す。
「ん?ああ、これか?竹刀なわけないだろう!真剣だよ。」
真、剣…
銃刀法違反ですよ、なんて言う余裕はなかった。
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