サクラ咲ク
「あはは!そうですかね?」
悠希は特に俺の質問に疑問を感じなかったらしく、普通に答えてくれたのを見て少し安心する。
「そうだよ。前まであんまり自分から話しかけたりしなかっただろ?」
そう言うと、悠希は参ったというように笑った。
「藤堂さんはよく周りを見てるんですね~さすがです!!」
え、そっち?
と思わず拍子を抜かれる。
でも尊敬したように言われるのは、悪い気はしない。
「…最近やっと、沖田先生のことが、ほんの少しだけ理解できた気がするんです。」
「総司のことを…?」
「はい。それで…傍にいて思ったんです。沖田先生は…いつか消えちゃいそうで怖いって。」
怖い、と言って悠希は俯いた。
俺はただ驚いて息をのんだ。
俺と同い年で、壬生浪士組一の剣客で…
そんな総司が、消えちゃいそう……?
「…総司は悠希が思う何倍も強いと思うよ?」
「あ、そうじゃないんです!!沖田先生が斬り合いで負けることは、ないと思います。」
けたけましく鳴いていた蝉が、ピタリと鳴くのをやめ、辺りは無音の世界になった。
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