サクラ咲ク
十二、紫露草 [尊ぶ]
それは一番隊の午後の巡察の時だった。
「御主ら、壬生の狼の沖田総司だな!?」
私沖田先生で宿の帳簿を確認していたら、不逞浪士に囲まれた。
「ひぃ!!!」
宿主が悲鳴をあげ、座り込んだのが見えた。
「…悠希さん。宿の中なのでなるべく血を流させないで下さい。」
沖田先生が私にそう呟いて、刀を抜いた。
「はい。」
私も刀を抜き、構える。
竹刀の数十倍重い、この真剣の重さには未だに慣れない。
敵の数は八人。
対してこちらは他の隊士さんと別行動中だったから、私と沖田先生だけ。
単純に考えて、一人四人相手にすることになる。
できる、かしら。
刀を持つ手に力を込めて、息を整える。
一瞬、静かな沈黙が広がる。
「っやあぁぁぁぁぁ!!!!」
そう叫んで一人の浪士が飛び出してきたのを合図に、他の七人も飛び出してきた。
.