サクラ咲ク
「梅ちゃんが、自分が死んだら貴女に渡してほしいって。そう言った次の日に死ぬなんて、思ってもみなかったけれど。」
無理矢理に口元を上げて笑うお菊さんに、私はただ頭を下げた。
「私・・・本当に・・・」
ふがいないと思う。
あんなに近くにいたのに、助けることも出来ずにいた。
何も知らずに、その命が散った。
私は、私が思う以上に、
無力だった。
会いたいと、ただ思う。
その死を知ってなお、もう一度会いたい。
込み上げてくる思いは、ただ名の知らない色に沈む。
不意に、店に置かれた青い布が目に映る。
「・・・何色?」
思わず問う。
「勿忘草色。」
麗君が呟いた色の名に、どうしようもなく苦しくなる。
「わすれなぐさ、いろ・・・」
「そう。空色より深い青。勿忘草の色。」
悲しみに満ちた色。
勿忘草色。
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