サクラ咲ク


「・・・理由なんて俺は知らないけど、あんた、そんなに不幸じゃないと思う。」




そう言って麗くんは少し笑った。




「母さんは、あんたの事、実の娘だと思ってるし。」




母さん、っていうのは、お菊さんのこと。



「お梅さんが死んだ日から、ずっとあんたが来るの、待ってたし。」




ずっと・・・?




あの悲しみの青に満ちた日から、私を待っていた・・・?





「・・・本当ね、」





呟いて、笑う。








「私は、私が思う以上に、幸せ者だわ。」





誰かに守られて、大切に思ってもらった。



その事実に気付かないまま、当たり前のように生きていた。



不幸だなんて、 そんな言葉、私が使っていい言葉じゃないのに。






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