サクラ咲ク
「そうだ。ずっと気になってたけど、私の名前は“あんた”じゃないわ。“悠希”って名前がちゃんとあるんだから。」
そう言った私に、麗くんは眉をひそめた。
「・・・別にいいじゃん。」
「駄目よ。名前って大事だもの。」
麗くんとはきっと長い付き合いになる。
・・・ そうであればいいという勝手な希望かもしれないけど、
だからこそ、名前を呼んで欲しい。
「・・・ゆーき。」
小さく呟いた声を聞いて嬉しくなる。
やっぱり、悪い子じゃない。
「何にやにやしてんのさ。気持ち悪い。」
悪態をついたって、その裏の優しさも知ってるから。
麗くんと話して、自分の中で封印していた何かが解放された気がする。
そっと、雪解けの合図のように、その言葉は春を連れてきた。
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