サクラ咲ク
お母さんが私を捨てた理由が、優しいものならいい。
真偽なんて、きっともう一生わからないままかもしれないけど、そう信じていたい。
「あ、悠希じゃねぇか!」
屯所近くまで来ると、巡察帰りらしい藤堂さん達の隊に会った。
「あ、お疲れ様です。」
ぺこりと頭を下げる。
「おう・・・えっと・・・お客さん?」
藤堂さんは遠慮がちに麗くんを見て言った。
「初めまして、藤堂様。立花呉服屋の店主の、立花麗と申します。」
初めて会った時みたいに柔らかく笑って、麗くんは丁寧にお辞儀をした。
「立花呉服屋・・・あ!俺たちの隊服を頼んだ店か!!!」
「その折は誠にありがとう御座いました。そのお話で、局長様か副長様にお尋ねしたいことがありまして・・・いらっしゃいますか?」
「部屋にいるはずだけど・・・悠希!悪いけどお客さん、局長室まで案内しといてくれねぇか?」
「はい、分かりました。」
藤堂さんと別れて、麗くんと再び二人になる。
思わず溜め息が漏れた。
「・・・まるで二重人格ね。」
「曲がりなりにもお客様だからな。」
曲がりなりにも、って言葉が気になったけど、局長室についたから追及するのはやめた。
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