サクラ咲ク
十四、桔梗 [誠実]
まだ夜もあけない空を見上げる。
なんとなく目が醒めてしまった。
まだ夜は明けてはいないけど、真っ暗ではない。
薄暗い、という表現をするのかもしれない。
だけど東の空は黒に光を混ぜたような色をしている。
あの空の色の名を、私は知らない。
こっちの時代に来て、色の名を知るようになった。
夕焼け空の色、唐紅。
夜空の色、濃藍。
悲哀の色、勿忘草色。
この時代の人たちのほうがそんなものを沢山知っている。
その色の名を知った時、漸く本来の色の美しさを知ったような気がする。
そうやって、赤く染まる世界から綺麗なものを探しているのかしら、とも思うけど。
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