サクラ咲ク
十七、大文字草 [節度]
「れ・・・麗くん・・・」
私の手を強く握りながら、ずんずんと進んでいく麗くんに戸惑いながら声をかける。
そんな私の揺れた声に気付いているはずだけど、麗くんはただ人のいなくなった静かな街の中を進んでいく。
手を、繋いだまま。
月明かりに照らされて、淡い陰が二人分揺れた。
「・・・お願い、離して。」
呟いて、懇願した私に、麗くんはやっと立ち止まった。
背は、向けられたままだけど。
でも、そのほうがいい。
私にとっても。
そう思って、小さく言葉を紡ぐ。
「・・・庇ってくれたこと、嬉しかったわ。ありがとう。」
守るように、そうやって扱ってくれたこと。
私一人じゃ、どうなっていたかわからない。
本当に、本当に、
「感謝、してるの。」
嬉しくて、嬉しくて。
この手を、握ってくれたことが、泣きたいくらいに優しくて。
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