サクラ咲ク
「困ります、雅様。京の都は、穏やかに見えて危険でございますれば。雅様の身に何かございましたら、私は一生、日野の旦那様に頭があげられません。」
至極真面目な顔をして、麗くんは早口にそう言った。
「ささっ、中へ御入り下さい。」
背中に手を回され、ぐいぐいと店の中に追いやられる。
どうやら、麗くんは私を雅という名の姫か何かにして、この場を取り繕うらしい。
そう考える自分が、やけに他人事なのに気づく。
「あっ、おい!!」
「原田殿!口を御慎み下さい。こちらは日野家の姫君ですよ。」
私を追うように声をあげた原田さんに、ぴしゃりとそう言って麗くんは私を庇うように立った。
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