サクラ咲ク



不意に、近くにいた男と目が合った。



「…女はいいなぁ、幸せで。」


しみじみと呟く。



「あら、茂吉さんだって、奥さんがいらっしゃるじゃない。」


可笑しそうに彼女は笑った。

それを聞いて中年の侍は悲しげに笑う。





「最近、長州の奴らが不穏な動きをしとるらしい。いつ戦になるかなんぞ、分かったもんじゃない…」



長州の、奴ら?
不穏な動き?



浅葱色が、痛い。



彼らは、戦ってるの?
みんな、生きてるかしら?



苦しい。
どうしようもないくらい。



もう、関係ないはずなのに。


もう、戻れやしないのに。



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