サクラ咲ク
店を出ると、もう夕方だった。
纏まらない気持ちのまま、ぼんやりと町を歩く。
京の町は、唐紅に染まって、その美しさを増す。
世界はこんなに綺麗なんだ!と叫ぶように。
視線の隅に、話し込む侍たちを見つける。
「……――、……、…今夜………、………やけ。」
「―――…やけに、――…、」
方便混じりの言葉に、思わず立ち止まる。
長州、かしら?
反射的にそちらに向かおうとした自分にハッとする。
今の私に、何ができる?
綺麗な着物に身を包み、
刀も持たない私に、
何ができる?
武士でもない私は、それをする意味すらないじゃない。
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