サクラ咲ク
「……本当は、ずっと気付いてた。」
麗くんの声が、風に乗る。
夏の余韻に浸るような温い風が、小さく駆け抜けた。
「お前が居たい場所を、俺はずっと、知ってたよ。」
悲しそうに笑って、自分の腰にある刀を、私に差し出した。
「お前って、酷いよね。どんなに手の内に、って思ったって、すぐ逃げて行く。俺の気持ちなんか、知らないまま。」
「麗くん…」
差し出した刀を、麗くんは私に無理矢理受け取らせた。
その重みが、懐かしい。
麗くん、と名前を呼ぼうとした時、唇に温かい感触を感じた。
「…約束、だ。」
呆然とする私に、麗くんは切なげに笑った。
「死ぬな。」
零れた言葉が、震えていた。
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