サクラ咲ク
ズキズキと痛む良心を知らないフリして、平静を装う。
「近藤さんの家って京にあるんですか?」
「家?…あぁ、まあ家みたいなもんだな。すぐ近くさ。」
「へぇ…でも言葉は標準語ですね。」
近藤さんの話す言葉は綺麗な標準語。関西のなまりは全くない。
「ひょうじゅんご?」
近藤さんが首を傾げて聞き返した。
しまった!と焦りながら、慌てて訂正する。
「ひ、東のほうの言葉ってことです!!」
「ああ!よく気付いたなぁ!実はこっちに来てまだ半年ぐらいしか経っていないんだ。」
大して気にする様子もなく答えた近藤さんに、安心した。
「お引越し…ですか?」
「いや、上京だ。将軍・徳川家茂の上洛に際して、将軍警護の名目で募集をかけて、」
んん?
徳川家茂…は、確か江戸時代後半の…確か十四代目将軍。
上洛の意味はわからないけど、多分、将軍が京都に来て、
その護衛の為に、近藤さん達が集められた…ってこと?
「まぁ、今は京の街の見回りなんかをしてるんだがな。」
「へぇ…」
近藤さんの言葉を曖昧に流して、私はゆっくりと考えた。
徳川家茂は十四代目。
徳川家は十五代まで続くから、時代は幕末と考えていいはず。
その将軍の護衛ということは、近藤さんは幕府側の人間。
日本史は嫌いだったけど、進学校に通っていたからある程度は分かっている。
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