サクラ咲ク




「何それ…」




私、お母さんに嫌われるようなことしたかな。


お母さんは優しくて、温かくて、いつも笑顔で…


自慢の母だった。


小さい頃から父親はいなかったけど、お母さんが沢山愛情をくれたから、寂しいことはあっても、不幸だとは思わなかった。



なのに。




「何、それ…」




仲のいい友達が何人出来ても、いつだってお母さんが一番の理解者だった。




『お母さんを嫌わないでね。』




そう書かれた文字が浮かんだ。




嫌わないで、だなんて。





「嫌いになったのは、お母さんのほうじゃない…」







小さく呟いた声は、殺風景な部屋に哀しく響いた。




世界は果てしなく白に沈んだ。



.
< 3 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop