サクラ咲ク
「では行きますか。」
沖田さんの言葉で私たちは巡察に向かった。
朝の太陽の真っ直ぐな粒子が、辺りに散らばって光る。
はしゃぐように反射して、辺りを照らす。
初めて歩く京の街は、まだ誰もいなくて、どこか儚くすら思えた。
「綺麗な街………」
思わずつぶやくと隣を歩いてた隊士の人が笑った。
「まだ眠ってるこの時間が、一番綺麗な時だよ。」
「…人がいない時間ってことですか?」
尋ねるとその人は頷いた。
「酒井はまだ若いのに聡明だな。」
「そんなことありません…でも、分かる気がします。良くも悪くも、人がいないと何も無駄なものがありませんから。」
憎しみ、怒り、悲しみ、そんなマイナスの気持ちを持たない街は、綺麗という形容詞が似合うんだろう。
「でも、人がいるからこそ、ここを“街”と呼べるんですよね…」
人のいない街は、荒む運命を待つだけだから。
「ははっ!確かにな。」
その人はそう言って笑った。
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