サクラ咲ク
「先生!水谷先生!」
水谷道場、と書かれた看板のかかった扉を叩く。
上がる息のせいでうまく喋れない。
実は、さっきまでここで稽古していたから、ここに来たのは本日二度目なんだけど。
「んあ~?誰だよこんな夜中に。」
扉の向こうからめんどくさそうな声がしたと同時に、ガラリと扉が開く。
「悠希じゃねえか。こんな夜中になんか用か?」
その姿を見てどこか安堵する。
訝しげに私を見つめる先生に、私は何か言おうと口を開くが、何も言えなくて俯く。
「…なんだよ。忘れもんか?」
何も言わない私に、先生は更に問い掛けた。
「………………。」
「…まぁ入れや。」
くるりと背をむけて道場に歩き出した先生に、黙ってついていく。
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