サクラ咲ク


道場に入ると先生は、棚から何かを取り出した。




「着替えろ。」



ただそう言って、先生は私に剣道着を渡した。

私の剣道着。





私に背を向けた先生。
しばらくその大きな背中を見つめて、私は言われた通り、剣道着に着替えた。




着替え終わった頃合いを見計らって先生がこちらを向いた。





「座れ。」





言われた通り、道場の真ん中に正座した。

先生も私の正面に腰を降ろす。





しばらくの間、お互いに何を言う訳でもなく沈黙が続いた。




時折、風が強く吹いて、窓にぶつかる音がやけに大きく聞こえた。






「…俺からは、聞かないからな。」








沈黙を破ったのは、先生だった。








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