サクラ咲ク

「お前が情けねぇ顔してる理由も、様子がおかしい理由も、夜中に尋ねてきた理由も、聞かない。多分、聞いたって、俺は答を知らないからな。」



「…………。」



「甘えるな。何を求めて来たのかは知らねぇが、答なんざ人に求めるな。自分に聞け。」



「自分、に?」



ようやく言葉を発した私に、先生はゆっくり頷いた。



「そーだ。自分に、だ。道場は貸してやる。」





そう言って、先生は立ち上がりさっさと道場を出て行った。







水谷先生とは、もうだいぶ長い付き合いになる。



小学校に入学と同時にこの道場に入門した。

月謝がとんでもなく安いからという理由でお母さんが無理矢理剣道を習わせたのだが、嫌だと思ったのは道場に足を踏み入れるまで。



道場に入った瞬間、私は魅せられた。



竹刀を振る。

それだけの動作に、幾千の光を見つけた。






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