サクラ咲ク
七、睡蓮 [純真]
真っ暗な自室の隅で膝を抱えて座り込む。
なぜだか、どうしようもなく怖くなって。
疑う事なんて現代でだって何度といわずやってきた。
なのに、この時代じゃ同じ“疑う”でもまるで異質。
命まで左右する言葉だなんて、思ってもみなかった。
現代が、どれだけ平和だったのか思い知る。
どれだけ、恵まれた場所にいたのか、痛いほど感じる。
無くなってから気づく、なんて言うけど、本当にその通りだわ。
「…悠希?」
不意に、襖の向こうに誰かが立っていた。
月明かりをバックに、そのシルエットが黒く浮かぶ。
「…入るよ?」
遠慮がちにそう言って襖が開いた先には、藤堂さんがいた。
「うわ!真っ暗じゃねぇか。そんなとこで何してんだ?」
「ちょっと…考え事を…」
「考え事?てゆうか、どこ行ってたんだよ!」
ちょっと怒ったように言う藤堂さんに思わずビクリとする。
「ごめんなさい…あの…お梅さんの所に…」
「え!?芹沢のほうに行ってたの!?」
「はい…いけませんでしたか…?」
「いや、いけなくないけど…無断で出かけんなよ…そんなんだから…」
藤堂さんはそこまで言って口を閉ざした。
「…そんなんだから…なんですか?」
続きを促すと、焦ったように笑った。
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