サクラ咲ク
八、勿忘草 [忘れないで]
「おはようございます。」
朝早くに、調理場に行くとお梅さんが朝ごはんを作っていた。
「ゆ、悠希はん…?」
動揺したように瞳を揺らすお梅さんに、私はにっこり笑った。
「胡瓜切ればいいんですか?手伝います。」
「ちょ…悠希はん…?」
「あ、大丈夫ですよ!今日は一番隊は昼から巡察だし、朝稽古もまだなんです。それに、料理はちょっと得意だし…」
「そうじゃなくて!!!なんで…?」
なぜか泣きそうな顔をしているお梅さんを、そっと見上げる。
「…関係ないんです。」
「え…?」
「お梅さんが私を信じてなくったって、疑っていたって、私には関係ないんです。」
トントントン、と胡瓜を切る規則正しい音が静かに響く。
「私は、お梅さんの事、信じてますから。」
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