先生の天使
「ホントに送らなくて大丈夫?」

帰りの支度をする綾香に裕二が心配そうに言う。

「うん、大丈夫~」

無理に裕二を外に連れ出したくなかった。

裕二は無言で靴を履いた。
綾香が顔を上げる。

「裕…」

「送るから。こんな夜に歩いて帰るの危ないから」

綾香は一瞬悩んだが、そのままお願いすることにした。

「ん」

玄関を出ると裕二が手を差し出した。
綾香はそれだけで嬉しい。にっこりとしてその手を握った。

特に会話するわけでもなく綾香の家に向かう。

「綾香ってさ」
「ん?」
「会話しなくてもいいんだなって安心する。今まで会話が切れると何か言ってよとかって言われたから」

綾香はびっくりする。

「だってずっと喋ってるのっておかしいもの。」
その答えに裕二が綾香を見た。
「そうだな」
「そうだよ」

そしてまたしばらく無言で歩いていたが、前方から歩いてくる人物に驚いて綾香は慌てて裕二の後ろに隠れる。

「?綾香?」

前を見るとある男が歩いて来た。
裕二はその人物を見て綾香の前に立って睨んだ。
< 131 / 170 >

この作品をシェア

pagetop