先生の天使
「あら~いらっしゃい」

呑気な綾香の母親が顔を出す。

その時物凄い勢いで綾香が階段を下りてくる。
驚く母を見ずに裕二の腕を掴んで自分の部屋へ連れて行く。

「あ、おっお邪魔します」

というのが精一杯で綾香の母はどうぞ~と笑った。

綾香の部屋に入ると窓にダンボールが貼り付けてあった。
慌てて貼ったんだろう。ガムテープはめちゃくちゃだった。

「裕二君、外に黒井さん、いた?」

震える手で裕二の腕を掴む。

その手をそっと握って優しく言った。


「いないよ。大丈夫」

その言葉に綾香は心底ほっとした様子だった。


「笑ってたの。こっち見上げて。嬉しそうに笑ってた。でも何だかオカシイの」

「オカシイ?」

「普通に笑ってるんだけど、私を見て笑ってる感じじゃなくて…なんて言ったらいいんだろう…?」


苦悩する綾香に

「うん、なんとなく分かるから大丈夫」

本当は分かってなかったが綾香を安心させたかった。

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