先生の天使
教室のドアの前で裕二は緊張していた。
中からはわいわいと楽しそうな生徒たちの声が聞こえる。
意を決して裕二はドアをガラリと開けた。

生徒達は裕二を見て静まり返った。
裕二を生唾をゴクリと飲んだ。

しかし次の瞬間。

「先生!!!」

わぁっと生徒達が笑顔で駆け寄ってきた。

「先生、寂しかったよ~」
「も~具合はいいの?」
「先生がいないと女子がノリが悪くて困ってたんだぜ!」

口々に喋り始めた。
かをりが言った通りだ。大丈夫。俺はやれる。自分に言い聞かせた。

「わかったわかった。とりあえず席につけ~出席取るぞ」

裕二の言葉に生徒達は素直に席に付いた。

その時にぽつんと花瓶が置かれた席に気づいた。
かをりの席だ。

もう随分たつのに花は買ってきたばかりのようだった。
生徒達も色々考えたのかもしれない。

そう思って一呼吸した。

「待たせたな」

そう言ってにやりと笑った。

生徒達は裕二がかをりの席を見つめていても誰も何も言わなかった。
ただ、裕二の笑みにわぁっ!!!と盛り上がった。
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