先生の天使
「え?」

職員室で昼食を取っていた裕二が聞き返した。

「教育委員会でも問題になりましてね…対応を校長が考えていたら生徒達が自分から平沢かをりの家に謝りに行ったそうです」

生徒達が自分から?

「平沢のご遺族もそれで納得したらしく何も問わないと…」

「え…でも平沢は引っ越して…」

「行ったそうですよ。今の家まで」

裕二は驚いた。家まで行って謝ったってことは生徒なりに話し合ったのかもしれない。自分が落ち込んでる間にこの多感な時期の子供が自分の行為を考えて…

裕二は自分が恥ずかしくなった。
そして思った。
平沢はそれをちゃんと見ていたのかもしれない。
だから自分を追いやった同級生を恨むでもなく自分と綾香の元に来たのかもしれない。と…

今はもうその声を聞けないと思うと寂しかった。

自分の生徒を誇らしくも思った。

確かに間違いがあった。
それを止められなかった自分にも責任はあるし、やっていた方も引っ込みがつかなかったのかもしれない。

結果は最悪と言ってもいいものだったが、裕二はかをりが最後に言った時の思い残すものはないというモノだった事を知っている。

結局、最後まで敵わなかったなぁ…と窓の外を見て思った。
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