先生の天使
綾香は校門の前で裕二を待っていた。
もし、また落ち込んで前の状態に戻ってしまったら…
そう思うと待たずにはいられなかった。

帰っていく生徒達にジロジロと見られて恥ずかしかったがそんな事は言ってられない。

すると大きな声でわいわいとしている一団が校門に向かって歩いて来た。

中心には楽しそうに笑っている裕二がいた。

「じゃあ、俺は車だから気をつけて帰れよ」

「え~」

生徒達は不満そうだった。

綾香は心底ホッとした。大丈夫だったんだ…かをりの言っていた事は本当だった。

そして邪魔しないようにそっと帰ることにした。

もたれかかっていた門から身を放し、1歩、2歩と歩き始めた時だった。

「あ…あれ…?」

お腹が痛い…どうしたんだろう?今の今まで平気だったのに…

余りの痛さに座り込んでしまった。

「痛…」

何これ?どうしてこんなに痛いの…?
苦痛に顔を歪める。

座り込んでいる綾香に裕二が気づいた。

「綾香!?」

慌てて駆け寄る。

「ゆ…裕二君…」

「どうした?」

「お腹が…痛くて…」

そう言うのが精一杯だった。

生徒達も駆け寄ってきた。

「先生、この人、冷や汗かいてるよ」
「立てないの?」

口々に言いながら綾香と裕二を囲んだ。
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