先生の天使
かをりを立たせて聞く。
「学校では…皆にあんなことを?」
かをりはうつむいたままだ。
「ちゃんと聞かせて?」
綾香はかをりの顔を覗く。
「あのグループだけ…皆は横目でみてるだけ…」
「そう…」
綾香はため息をついた。

「ほら!学校行って来なさい!私も会社行くから。途中まで一緒に行く?」

すると1人でいいです。とトボトボと登校していった。
それを見届けて綾香も仕事へいく。

会社につくと休み時間に頼れる先輩川口に相談する。
「いじめかぁ…難しいよね」
「私はどちらかというと裕二君という先生側だし…どこまで裕二君に話したらいいのか…」
「じゃあ、一度皆の前で叱ったら?」
「でもそれじゃかをりちゃんが傷つくから…」
「あ、そっかぁ」
「どうしよう…」
「とりあえず、裕二君には全部言うべきだと思う」
「やっぱりそう思います?」
「うん。」
「旦那が言ってたんだけどさ、裕二君ってあのルックスにあのさばさばな性格でしょ?生徒に人気があるんだって。バレンタインとかも結構マジチョコ貰ったりしてるみたいだよ。」
「そうですよね。分ります。私もそこに惹かれたんだし…」
「とにかく裕二君に言って考えた方がいいって」
「そうします」
考え込む綾香に
「とりあえず今は仕事!」
と一喝され、はい。と仕事に戻った。


「かをりちゃんのお母さんが?」
夜、話をしようと裕二に電話をかけると裕二がぽつりと言った。
「うん、改めて申し訳ないって。俺、そんなのいいですって言ったんだけど平沢がいじめられてるのも知ってて…」
「え?かをりちゃんが言ったの?」
「うん。でも平沢が悪いからって言うんだ。」
「そんな…だってあれは…」
「俺の不注意だったんだ…あの時ついカッとなって…」
裕二の声は今までに聞いたことないくらい落ち込んでいる。
「裕二君…」
綾香は言葉が見つからない。
「…させるって」
声が小さくて聞き取れない。
「え?何?」
少し声を大きく裕二が言った。
「転校させるって」
綾香は驚いた。
「ええ?だってそんなことしても何の解決にもならないじゃない」
「うん、引き止めたんだけど…近所にも事故の事、知れ渡ってるらしくて引っ越すんだって。」
綾香は絶句する。
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