先生の天使
「どうしたの?その顔!」
泣きはらした綾香の目は腫れ上がっていた。
「とりあえず今は仕事!その顔だとお茶だし出来ないから私がやるから」
そう言ってお茶を運んで行った。
鏡で自分を見る。
酷い顔だ。この世の終わりみたいな顔してる。
綾香は席について仕事をはじめた。

お昼になり、川口と食事をしていた。でも喉を通らない。
「ちょっと待って。その黒井って人に携帯番号渡したの?」
言われて気付く。
「…そういえばどうして私の番号知ってたんだろう?」
「おかしいよ。それ」
「あの時、裕二君以外は知らないはずなのに…」
「番号盗み見たな…」
そういえば裕二の携帯はずっとテーブルの上に置いてあった。
「綾香のこと気に入ったから裕二との関係壊すつもりなんじゃない?」
「そんな………だからって酷すぎる」
綾香は泣き出す。
川口は慌ててハンカチを渡す。
「電話に出てくれないの。裕二君」

う〜むと川口は考え込むと
「うちの旦那を巻き込むか」
「え?」
「誤解を解くのよ。はめられたって。裕二君に言わないとこのまま自然消滅だよ」
「自然消滅……」
ボロボロと涙が出てくる。
「大丈夫だって!誤解なんだからすぐとけるよ!ほら食べな」
と食事を促す。泣きながら御飯を一口だけ食べた。


「誤解?」
居酒屋で裕二が驚く。
「川口サンは綾香は悪くないって?」
居酒屋はざわざわとしていて声が聞き取りにくい。
「こういったら何だけどさ…その黒井っていうのに騙されただよ。お前」
そう言ってビールを口に運ぶ。
「考えてもみろよ。恋愛音痴が自分から電話番号交換するか?お前だけなんだろ?平気なの。そしたらお前の事で会うしかないじゃん。断るだろ?喋れないんだから」
裕二は考え込む。
「綾香ちゃんのこと気に入ったんだろ。で、置いてあったお前の携帯から番号盗み見したんだよ。きっと」
「じゃあ、綾香が俺の過去気にしてたのも…?」
ジョッキを置いて川口がいう。
「あ、ごめん、それうちの女房が言った」
「はぁ?!」
裕二は立ち上がる。
「まま、座れ」
慌てて川口が指示する。
「それはお前が綾香ちゃんだけだって分らせればいいんだから問題ないだろ?問題はその黒井だろ?」
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