先生の天使
その時、玄関が開く音がして

「裕二~いるの?綾香ちゃんも~ただいま~お土産買ってきたわよ~」

と裕二の母の声がした。

裕二は動かない。

綾香が慌てて玄関に行く。

「おかえりなさい」

綾香は気丈に振舞おうとしていた。

「君が綾香ちゃんだね。はじめまして。裕二の父です」

紳士なおじさんがにこやかに言う。
綾香は軽く会釈をしてかをりのことを話した。

母の顔色が変わる。

「あの子が?」

「…はい」

気丈に振舞おうとしていたが涙が出てしまう。

「綾香ちゃん、裕二は?」

「へ…部屋にいます。自分のせいだって凄く責めてて…」

そこまで言って泣き出してしまう。

「あなた、綾香ちゃんを応接間に」
「ああ、そうだな。さ。」

促されるまま応接間に通された。

「君のせいでも、裕二のせいでもないよ。先方のお母様はそんなつもりで遺書を送ってきたんじゃないと思うよ」

裕二の父が言った。

遺書…そうか遺書なんだ。お手紙じゃないんだ…

「うぅ…ひっく」

泣き止まない綾香の隣に座り、じっと見守ってくれていた。
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