先生の天使
「落ち着いたかな?」

鼻を赤くしながら

「は…はい。すいませんでした」

裕二の父は綾香の頭をぽんぽんと優しく叩いた。
裕二もよくやる癖だ。
父親に似たんだな。

こんな時にぼんやりと考えていた。

「こんなだし、君は帰りなさい。送って行くから」

ソファから立ち上がった裕二の父に慌てて綾香は言う。

「あっ大丈夫です。私…」

「私の運転じゃ不満かい?」

にこやかに言われて綾香は

「…お願いします」

としか言えなかった。

裕二は部屋から出てこない。

気になったが裕二の母に任せた方がいいと思い、後ろ髪引かれる気分で裕二の家を出た。


父の車をみて驚く。
ジャガーだ。
お金持ちしか乗れないジャガー。

でもその時間もすぐに去り、かをりの事が頭に浮かぶ。

綾香の家に向かいながら、裕二父は言った。

「君のことはよく聞いてるよ。家内から聞いてるよ。まっすぐないい子だって言ってたよ。裕二にはもったいないってね」

綾香は真っ赤になりながら

「そんなことないです…私全然駄目で…今日もどうしていいのか分からなくて…裕二君が辛いってなってるのに、私…」

泣きそうになるがこらえる。

「裕二には君があってると思うよ。今まで連れて来た女の子は家を見ては、ブランド物を買ってだの、お金貸して欲しいだのってね、それで裕二も別れてしまってたんだがね。君は何も言わないでただ裕二の事思ってくれてるんだろう?」

綾香は驚いた。
それであの人数なんだ……
裕二は言いたくなかったんだ。お金目当てだったって…

「さ、着いたよ。ここでいいかな?」

ちゃんと家の前で止まってくれていた。

「はい。どうもありがとうございました。」
そう言ってドアを閉めようとして慌てて言った。

「明日もお邪魔していいですか?」
「勿論だよ。綾香さん」

そう言って車は去っていった。
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