先生の天使
部屋は電気をつけてないせいか酷く暗く感じた。

「電気つけるよ?」

と言って電気をつける。

明るくなったら昨日座ってた同じ場所で裕二が座っていた。

「裕二君?」

裕二は何も聞こえないかのように反応しない。
どこを見てるのか分からない目線。

裕二の座っているソファの前のテーブルに食事を置く。

「食べてないんでしょ?お腹すいてるんじゃない?食べよ?」

裕二は反応しない。

「裕二君!」
綾香は無理やり裕二の顔を自分の方に向ける。
やっと裕二の視線が定まった。

「…綾香?」

泣きそうになりながら綾香は答える。

「うん、そうだよ。ご飯食べよ?」

裕二はちらりと食事を見て「いらない」と言う。

しかし綾香は負けない。

「駄目!食べて!」

食事はビーフシチューだった。
スプーンにビーフを乗せて裕二の口に持っていく。

「いいって」

覇気なく言うが「口あけて」とスプーンを口につける。
裕二は仕方ないかのように一口食べた。

「食べてないから美味しいでしょ?」

裕二は綾香から目をそらし

「平沢はもう食事も出来ないんだ」

と言い、頭を抱える。

綾香は泣きそうになるがぐっとこらえた。

「裕二君、昨日寝たの?」
「…いや」

「じゃあ寝なさい!」

裕二を立ち上がらせベッドに連れて行く。
横にさせて布団をかけた。

「起きるまでいるからね。安心して眠ってね」

綾香はそう言ってベッドの横の椅子に座った。
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