先生の天使
「綾香」
裕二が綾香の腕を掴む。
「ん?」
「一緒に寝て」

「へっ」

途端にいつもの綾香に戻り赤くなってしまう。

「大丈夫。何もしないから。側にいて」

こんな裕二は初めてだ。
綾香はテレながら布団に入った。

「抱きしめていい?」
裕二は細い声で言った。
「え!」
「何もしないから」

綾香はテレながらいいよ。と言った。

裕二が綾香を抱きしめる。
綾香は緊張で体がこわばってしまう。

でも裕二は安心したのかすぐに寝息を立て始めた。

綾香はやっとほっとした。そしたら涙が出てきた。
かをりを思ってとこんなになってしまった裕二の心境を考えると泣かずにはいかなかった。

30分くらいして裕二が寝返りをうった。
綾香から離れたのでそっとベッドから起きて食事を台所に持っていった。

裕二の両親は綾香を待っていた。

「どうだったかしら?」
不安そうに母が言う。

「…一口だけ食べてくれました。今はよく寝ています」

その言葉に両親はほーっとため息をつく。

おぼんを受け取りながら

「ありがとうね、綾香ちゃん」

母からは涙がひとすじ流れた。そのまま台所へ向かっていった。

「綾香さん、ありがとう。裕二の側にいてくれて」

この父の言葉を受けて綾香は言った。

「裕二さんが起きるまで部屋にいていいですか?側にいるって約束したんです」

「ご迷惑じゃなければ助かります」

その言葉に軽く会釈をして裕二の部屋へ戻った。
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