先生の天使
部屋に入ると裕二はまだ寝ていた。
ほっとした。

綾香はベッドの横に置いてある椅子に座って裕二をまじまじと見てみた。

1日しかたってないのにやつれた感じがする。
かをりが転校した時、笑ってくれたって喜んでいたから余計に辛いのかな。

「ん」

裕二が目を覚ます。

「綾香?」

「ここにいるよ。まだ1時間くらいしかたってないよ。寝て?」

「眠くないから起きる」

「えっでも…」

綾香が言ってる途中で起きてしまった。

またソファに座ってぼんやりとし始めた。

綾香は裕二の顔を覗き込んだ。
くまが出来ている。
眠くないなんておかしい。

「…どした?」

裕二の言葉に綾香が答える。

「裕二君、目の下にくまが出来てるよ。寝たほうがいいよ」

その言葉も裕二には届かず、「いい」って拒否されてしまった。

「ここ座って」

隣をポンと叩く。
綾香は裕二の隣に座った。
すると裕二が膝枕をしてきた。

綾香は真っ赤になってしまう。

「ゆゆゆ裕二君?」

「ちょっとだけ」

そう言って目を閉じた。

このまま寝れればいいけど…

こんなの裕二じゃない。
自信があって堂々としていた裕二はどこにもいなかった。

昨日写真見てる時はこんなじゃなかった。

裕二宛のかをりの手紙は何て書いてあったんだろう?
そんなにショックな事が書いてあったんだろうか?

でも勝手に見るわけにもいかないし…

裕二の髪に触る。
サラサラのストレート。
綾香はこっそり見つからないように涙を流した。
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