先生の天使
「平沢さ」

目を閉じたまま話始める。

「入学してきてその日に俺に告ってきたんだ。俺びっくりしてさ。先生だから生徒とは付き合えないって言ったんだ。そしたらさ、世の中には生徒に手を出す先生はいっぱいいるから諦めないって言ったんだ」

初めて聞く話だ。
かをりと裕二の歴史。

「俺、まだ平沢は子供だと思って適当にあしらってきたんだ。えこひいきにならないように…」

「うん」

綾香が次の言葉を待つ。

「でも綾香と付き合い始めて平沢にはちゃんと言わなきゃなって思ってたんだ。事故にあった時に来てくれたら言おうって…でも平沢は来なかった。その時におかしいって思ったんだ。今までずっと俺のあと追ってたのにこないなんてって」

「退院して学校に行っても会わないんだよ。平沢に。で、クラスの様子もおかしくて。でも何がおかしいのかが分からなかった。綾香から聞いた時、どうして気づかなかったんだろうって自分を恥じたよ。いじめじゃないかって」

裕二は目をあける。

「…俺、クラスで仲良くして欲しいって言ったんだ。平沢は関係ないって。」

「それが間違いだったんだ…」


裕二はまた寝息をたてはじめた。
綾香はそのままでいた。

今、裕二はかをりの死が受け入れられないのかもしれない。自分のせいだって思ってるから。

綾香には涙を流すことしか出来なかった……
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