先生の天使
ドアをノックする音が聞こえる。
「はい」
綾香の返事を待って母が入ってくる。

「あ、今裕二君寝てます」

とひ人差し指を口に持っていってシーとする。

「そう…」

母は二人の前に座る。

「裕二は何て?」

綾香は裕二の髪をさわりながら

「やっぱり自分の対応がよくなかったって後悔というか、自分を責めてて…」

母はただ裕二を見ている。

「先生なのに上手くできなかったって…」

綾香の目から涙がこぼれる。

「凄く話しを聞いてると不安定で…かをりちゃんはもう食事が出来ないとか…言ってて…」

「…そう…」

母は裕二の顔を触る。愛おしそうに。

「かをりちゃんから私と裕二君に手紙があったんですが…それ読んでから裕二君、様子が変わっちゃって…こんな裕二君は裕二君じゃないです」

うぅ…と綾香は泣きじゃくる。

すると母が綾香の頭をなでる。

「ごめんなさいね。本当なら私たち両親がやらなきゃいけないことなのに…」

綾香が鼻を赤くして首を振った。

「裕二君が…大変なら私、いつでも来ます。励まします」

「…ありがとうね。綾香ちゃん。」

そう言って母の目からも涙がひとつ、流れた。
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