先生の天使
「あれ…母さん?」

裕二が起きた。綾香は慌てて涙をごしごしと消した。

「裕二、ベッドで寝たら?」

裕二はぼうっとしたままだ。聞こえてるのか聞こえてないのか。

体を起こしてぼそりと言った。

「平沢はもう起きることないんだな…」

その言葉に綾香はなんて言っていいのかわからなかった。
すると母が裕二のおでこをぺちんと叩いた。

「そんな事思ったってかをりちゃんは帰ってこないのよ!しっかりしなさい!」

裕二はまた頭を抱えた。

「だって俺のせいなんだ…!対応が悪かったんだ…」

母は裕二の前にひざまずいて裕二の顔を覗き込む。

「裕二、かをりちゃんの手紙、何て書いてあったの?」

ずばりと聞いた。
綾香はドキドキする。

「俺には申し訳なかったって。でも俺を好きって言うのは本当だったって覚えていて欲しいって。今の学校の中に俺のところの学校の親戚がいてその子が噂を流して…学校中に広まってまたいじめが始まったって。
自分が死ねば両親も楽になるだろうし、それが一番いいって。
俺が教室で頭を下げた時、死ぬほど辛かったって。」

裕二は黙ってしまう。
「それで?」
と母が促す。

「うん…こんな事になるとは思ってなかった。自分が傲慢で綾香にまで嫌がらせみたいなことしてごめんなさいって。
すべては自分が悪いから死んでお詫びしますって」

「そんな…死んでお詫びなんてしてほしくないよ…!」

思わず綾香が言う。

「そうね、それは違ってると思うわ。でもね、一番辛いのはかをりちゃんのご両親よ。どんな気持ちで手紙を送ってきたと思うの?」

裕二はうつむいてしまう。

「今までの裕二でいてくれる方がかをりちゃんも嬉しいんじゃないかしら?」

裕二は押し黙ってしまった。
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