先生の天使
「かをりちゃんが好きだったのは自信があって堂々としてた裕二君が好きだったんだと思うな。」

綾香も続く。
しかし裕二は返事をしない。

「裕二君?」

綾香が覗き込むと目がうつろだ。

綾香と母は顔を見合わせてため息を同時についた。

「とりあえずベッドで横になりなさい。」

と母に促されベッドに横になった。
綾香と母は静かに部屋を出た。

応接間では父が心配そうに座って二人を待っていた。

「どうだ?裕二は?」

その問いに母は首を振って答えた。

「まだショック状態のままか…」

「自分の中で消化できるまでは何を言っても無駄みたい」

母はため息をつきながら言った。

消化…出来るんだろうか?
あんなに落ち込んでいるのに。
自分でどうにか出来るのだろうか?

綾香でさえ、かなりなショックだった。
裕二は2年間もかをりを見てきたんだ。ずっと裕二だけを見ているのを。
そのショックは計り知れない。

「学校が冬休みで助かったわ。あんな状態で学校に行かせられないもの」

母の言葉に綾香は言った。

「新学期になって、かをりちゃんの思い出がある学校に行って裕二君は大丈夫なんでしょうか?」

裕二の両親は顔を見合わせて黙ってしまった。
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