先生の天使
「その女の子の家に行って会った方がいいんじゃないか?」

父は思いついたように言う。

綾香と母は顔を見合わせる。

「でも逆効果って事もあるんじゃないでしょうか?」

不安そうに綾香が言う。

「そうね…」

母も同意した。

3人に沈黙が流れる。

「裕二に決めさせよう。それが一番いい」

父が沈黙を破る。

「でも今の裕二にそんな決断力あるかしら?」

「このまま一人で悶々と考えてても進歩しないだろう?」

と言われ2人も渋々同意した。

「じゃあ、裕二に聞いてみよう」

3人は裕二の部屋に向かう。

ドアを開けると裕二はベッドに座ってボーっとしていた。

父はその横に腰掛ける。

「裕二」

呼ばれても反応しない。

「かをりちゃんの家に行って会って来なさい」

その言葉に反応した。

「だってもう葬儀は終わったって手紙に…」

「葬儀に行くんじゃない。かをりちゃんに会って来なさいと言っているんだ」

裕二は考え込む。


「私も一緒に行くよ」

綾香が言うと裕二は細い声で「行く」と言った。
< 75 / 170 >

この作品をシェア

pagetop