ピュバティ ブルー


「親は俺が子供の頃、両方とも死んじまったよ。普通のサラリーマンだった。俺は途中から親父の弟夫婦に育てられたんだ」



「へーえ、じゃあ育ての親が有力者なんや」



春海が言った。



「いや、叔父夫婦も普通の菓子職人だよ」



松井が笑った。



「じゃ、どうやって聖華にもぐりこんだのよっ!」



と、夏希。



「大学時代に、俺の天才的で非凡な画才に目をつけた億万長者がいてスポンサーを名乗り出たのだ!お陰で随分といい思いしてきたぞ。その恩恵が今も継続しているって訳さ」



「へーえ、信用していいのかどうか」



智花が松井を覗きこんだ。



「天才も、はたち過ぎればただの人や。結果が高校教師じゃその気まぐれ億万長者も見込み違いで大金をドブに捨てたって訳やな」



春海が哀れそうな顔をした。



「なんとでも言え。それより早く写生にかかれよ。今は授業中だぞ」



「へーい」



葵のクラスメイトである三人を含む、美術クラスの生徒は河原に散らばった。

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