ピュバティ ブルー


「朝美は亡くなる前にニッコリ笑って、今日は金曜日でしょ?子犬にはフライデーって名づけてね。ロビンソン・クルーソーが助けた友達と同じよ。素敵でしょ!?って言ったんだ」



松井はいとおしそうにフライデーを見た。



「どうしてそんな目で犬を見れんの?フライデーが川に流れてこなければ、朝美さんは死なずに済んだじゃん。フライデーのせいであんたは恋人を失ったんだよ」




「しーっ、もうよせよ。フライデーが気にするじゃないか。彼は充分苦しんでいるんだ。パリでもセーヌ河畔を散歩しているとき、暫くこいつは朝美に似たシルエットの女性の後を何度も追いかけたんだぜ」



松井はフライデーの頭を撫でて言った。

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