聖なる光【完結】

「聖矢?」
私は久しぶりに聖矢に話しかけた。聖矢は振り向いたがまた空を見ている。
「聖矢ごめんね。聖矢から逃げてごめん」
私は聖矢に抱きついた。聖矢の体は震えている気がした。

辛かったよね。もう逃げない。
あなたを支えるから…
聖矢は少し安心したのか私の手を握った
。私はもっと強く抱き締めた。

聖矢はこらえていた涙を流しだした。

「辛かったよね。もう大丈夫。私がいるから」

拓真のときはずっとそばにいてくれた。
なのに私は逃げてしまった。でももう逃げない。聖矢を最後まで支えるよ。

「ごめん…光。俺、光を傷つけた」
途切れ途切れで聖矢は言った。

「ううん。気にしてない。そんなこと気にしなくていいの」

聖矢、大丈夫だよ。私が照らしてあげる。
あなたを輝かせる。絶対に…

「聖矢はただ走っててほしい。走ることはやめないで。絶対聖矢ならできる」

『人間やりゃーできんだよ。もちろん光だってな』拓真は言った。

誰だってやればできると。なら聖矢にできないはずがない。きっと戻れる。あの赤茶色のトラックに。

「聖矢、連れてってよ。私を全国に」
きっと変えてくれる。あなたならこの世界を逆転させてくれる。

「俺は世界一になる。お前が照らす光の下で俺は走るから」

聖矢、私あの時思ったんだ。絶対にこの人ならやってくれるって。

私はこの人の背中を追いたい…そう思ったんだ。
私はあなたを追う。きっと追い付いてみせる。

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