忘れられない人
日付が変わってから家に戻ると、片付けの途中だったコーヒーカップが食器棚に戻されていた。

『陽菜‥』

俺を片手に持ち、陽菜の部屋の扉をノックしたが返事がなかった。もう寝たんだと諦め、こいつもシャワーを浴びたらすぐに自分の部屋に入って寝た。


俺はと言うと‥

こいつの部屋の机に置かれたまま、長い夜を過ごした。
初めて訪れた家。
店舗の冷酷な暗闇とは違い、何処か懐かしさを感じた。


俺は‥

名前も分からない男に買われ、明日は「陽菜」という女の指にはめられるであろう。

俺を見て喜んでくれるだろうか?
こいつは、陽菜の笑顔を見て微笑むのだろうか?

二人は‥「幸せ」になれるんだろうか。


明日イヤもう日付から言えば「今日」か。

今日、二人から笑顔が見れるか考えていたら寝付くことが出来なかった。
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