忘れられない人
ここまで話すと龍二は「ちょっと待ってて」と言って、私の傍から離れた。

嫌われちゃった‥
私は仰向けになって天井を眺めた。天井の中央には部屋の電気があり、蛍光灯が一つ消えかかっていた。
まるで今の私を表しているようだった。

だんだん視界がぼやけて来た。
「ここで泣いちゃダメ!!」自分に言い聞かせたけど、涙が頬を伝ってきた。龍二に気付かれないように目の上で腕をクロスして隠した。


『ヒャッ!!』

私のおでこに冷たいものが触れた。私は恐る恐る腕を下ろし、目を見開いた。すると、龍二がコップを持って立っていた。

『ほれ』

そう言ってコップを渡してきた。私は上体を起し、壁に寄りかかって一口飲んだ。

『おいしい‥』

喉が潤されて落ち着きを取り戻してきた。


『そりゃ、あれだけ一気に話せば喉も渇くだろう。ゆっくりでいいからな』

私は頷いて、もう一口飲んだ。今度は体の中まで潤された感じがした。


『次は、大晦日からの出来事を話すね‥』

コップの中で波を打っているジュースを見つめながら話し始めた。
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