忘れられない人
金曜日は、学校もバイトも楽しくて仕方がなかった。いつ彼が来るんだろう？私は、そればっか気にして仕事をしていたの。
余計なことを考えながらレジを打っていたから、何度も間違えちゃってね。

その上、彼は店に来なくて、ゴミを片付けているときなんて、本当にブルーな気分だったよ。

5時前に来てたのかな？とか
道が渋滞してるのかも。

なんて自分に都合のいいように解釈していたの。


私ってバカだよね。名前も知らない、ただのバイトとの約束なんて忘れるよね？それなのに私一人舞い上がってて‥


ゴミの片づけが終わって、店の中に戻ろうとしたとき突然

「タバコある？(笑)」って声をかけられたの。聞き覚えのある声に私は驚いて、持っていたゴミ袋を落としてしまったの。それを彼が拾い上げて渡してくれたんだ。

私は思わず
「本当に来てくれたんだ‥」って呟いてたよ。彼は「約束したでしょ？」って笑いながら店の中に入って行ったの。

私も後に続いて店の中に入って、彼がいつも買う缶コーヒーとタバコをレジの横に置くと彼は「ありがとう」って、また笑ってくれてね。本当に嬉しかったんだ。だから‥


「ありがとうございました」って、その日一番の笑顔で挨拶すると

「俺、大体この時間くらいに店に立ち寄ると思うから」

それだけ言って帰って行ったの。


それは、また逢えるって解釈していいのかな？

私は単純だから、自分の都合のいいように受け入れたんだ。

< 22 / 140 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop