忘れられない人
アドレスを交換したからといっても、始めのうちは全然メールをしなかったんだよ。
だって、今まで通り彼は、私のバイト先に来てくれていたから。だから、聞きたいことがあれば、逢った時に聞けばよかったんだもん。

あの頃の私は、メールの文章よりも、直接言葉で伝えたかったの。


‥ううん。もしかしたら

相手は社会人。きっと忙しいだろう‥って、私なりに相手を思いやってメールを我慢していたのかもしれない。

メールが出来る時間を聞けば、教えてくれただろうし、もしかしたら頻繁に出来たかもしれない。でも、彼の中に踏み込める勇気がまだなかったの。

だから、必要最低限しかメールは送らない様に自粛したんだ。



それから、どのくらい経った時だろう?
いよいよ私も「将来」について考えなければいけない時が来たの。

進学するのか就職するのか‥当時は、本当に迷っていたの。

進路に関しては、始めのうちは学校や家でしか考えていなかったんだけどね。周りが決まりだすと、私も焦ってきちゃって‥その悩みをバイト先まで持ち込むようになってしまったの。

「私も、真剣に考えよう!!」と思って、その事を店長に話したんだ。店長は「理由がそれなら仕方ない」って納得してくれてね。その月末までで、バイトを辞める事になったんだ。


その事をね、彼に話そうと思ったんだけど‥直接言うことが出来なかったの。どうしてだろう?やっぱり、逢えなくなる寂しさが先にきちゃったのかな。


だからね、メールを送ったんだ。

「今月末でバイトを辞めます。今まで来てくれて本当にありがとうございました」って。

私ね、前みたいにすぐに返信をしてくれると思っていたの。でも、彼からの返信は一向に来なかった。それどころか、メールを送ってから彼は、バイト先にも来なくなってしまったの。


彼に逢えなくて凄く寂しかった。

バイトの終わりに彼と話す事が日課になっていたのに‥それが急になくなると、やるせない気持ちになった。

何も手につかなくて‥
いつも彼の事ばかりを考えていたの。


あっという間に時が過ぎていって

ついに、彼からの連絡がないままバイトの最終日を迎えたの。
< 24 / 140 >

この作品をシェア

pagetop