忘れられない人

最終日はね、午前中、地域の運動会があったんだ。

役員になっていたお母さん達は、夜打ち上げがあったみたいでね。夕方はご飯を求めに来るお父さんや子どもが沢山来たんだ。

レジに行列が出来て途絶えることはなかった。忙しくて、あっという間に上がる時間が来たの。


私はいつもの様にゴミを片付けていたんだけどね。心の中では、彼が来ることを期待していたの。

でも‥彼は来なかった。彼の代わりに私の目の前に現れたのは、酔っ払った３人の男だったの。


「君、可愛いね」って言いながら私に絡んできてね。

本当は凄く怖かった。でも‥駐車場を含め、店の敷地内に彼らがいたから、お客さんとして接しないといけないと思ってね。私は「バイト中なんで」って言って作業する手を止めなかったんだ。

でも、彼らも一歩も引かなくて‥ずっと私に話しかけてくるの。

どうすることも出来なかった。
対処の方法が分からなかった。


そんな私の態度を知ってか知らずか、一人の男が私の腕を掴んで来たの。必死に抵抗したんだけどね、男の人の力には叶わなかった。

無視し続けていたんだけどね、仕方なく「何か用ですか？」って聞いたんだ。そしたら「バイト何時まで？」って聞かれて「もう上がりです」って答えてしまったの。

彼らは笑顔で「じゃあ、待ってるから」って言ってきてね。


彼らの態度を見て気付いたの。そんな事言うんじゃなかった‥って。でも今更気付いても後の祭り。

私は、ビクビクしながら店内に戻って、服を着替えて、従業員に最後の挨拶をしたの。


そして‥大きく息を吸ってから出入り口の扉を開けたんだ。

私の頭の中では、目の前に男が３人いて、無理やり車の中に連れ込まれて‥って最悪なシナリオが出来ていて、それに従うしかないって諦めモードだったの。


でもね、そんな状況から私を救い出してくれた人がいたの。

それが彼‥だったんだ。