忘れられない人
『私‥お腹空いちゃった。早く食べようよ!!』

『そうだな』

私の頭を一度撫でてから、私たちは車から降りた。

目の前には2軒の店が並んでいた。左の店は、落ち着いた雰囲気で大人の店って感じを漂わせていた。右の店は、店舗の照明が鮮やかで店の中の様子が丸見えだった。「まさか右‥じゃないよね?」私は心の中で思いながら龍二の後を着いて行った。


『ちょっとストップ!!』

私は、龍二の腕を掴んで止めた。

『どうしたんだよ?』

龍二は私の肩に手を置いて落ち着かせようとしていた。私は、龍二の反応を見ながらゆっくりと話した。

『まさか‥龍二のオススメの店って‥右の店‥じゃないよね?』

『そうだけど?』

龍二は平然とした顔で言った。「ウソでしょ?」肩の力が一気に抜けた。


『仕方ねぇ〜だろ!さっき思いっきり遊んだから金欠なんだよ!!今日は勘弁』

龍二は両手を合わせて謝った。
そして、片目だけあけて私の様子を伺っていた。そんな態度を見せられたら、今日は許すしかないじゃん!!私は龍二の手を引っ張って、オススメの店の中に入った。


夕飯の時間には、丁度いい時間だったので店内は人がいっぱいいた。

『場所変える?』

私は龍二に密着して甘えた声で言った。

『だから金欠だってさっきも言っただろ?』

龍二は私の鼻を摘んできた。私はその手を振りほどいてから言った。

『夕飯は私が奢るよ!今日、全部龍二が払ってくれたし‥私にも少し‥』

すると店内には大勢の人がいるというのに、龍二は私を抱きしめてきた。


『ちょっ‥!!』

『ダーメ。今日は、俺にとって特別な日だから』

『私にとっても特別な日なんだよ』

言い返してきた私を見て、龍二は考えていた。そして

『言うこと聞かないと、ずっとこのままでいるけどいいのかな(笑)』

悪ふざけを楽しんでいるかの様な笑みで私を見てきた。
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